ピーターズとウォーターマンの調査の手法には,根本的なまちがいが2つあった。1つは,ハロー効果によってデータが損なわれていた疑いが濃いことである。会社が成功した理由を経営者にたずねてみれば,私たちが何度も耳にしてきた類いの特徴を挙げるだろう。ビジネス雑誌を読んでも,同じことが書かれている。分析結果を改ざんする必要はない。そんなことをしなくても,そもそもデータは最初から信頼性が低いからだ。
だが,そのハロー効果が生じるのは第2のまちがいからである。ピーターズとウォーターマンの第2のミスは,傑出した企業ばかりのサンプル群を調査したことだ。専門用語でいえば,従属変数にもとづいた標本抽出,つまり結果にもとづいたサンプル選びをしたということである。よくあるまちがいだ。たとえば,高血圧の原因を探るとしよう。このとき高血圧の患者だけを検査しても原因はわからない。血圧の高くない人の検査結果を比較して,初めて原因がわかるのである。同じことが企業にもあてはまる。業績の良い企業だけを調査しても,そうでない企業との違いがわかるわけがない。これを私は「成功例だけをとり上げる妄想」と呼んでいる。
フィル・ローゼンツワイグ 桃井緑美子(訳) (2008). なぜビジネス書は間違うのか:ハロー効果という妄想 日経BP社 pp.151
PR