絶対的な業績という妄想が非常に危険なのは,単純な公式に従うだけで,ライバル企業の行動に関係なく業績を向上させられると思いこむことになるからである。この点に気づかなければ,経営者は的はずれなことばかりに気をとられてしまうだろう。この初歩的な考え違いは『ビジネスを成功に導く「4+2」の公式』のみのものではない。『ビジョナリー・カンパニー』もこの妄想に囚われている。ジェームズ・コリンズとジェリー・ポラスは,わずかな原則に従えば「時代を超える成功の計画図」が手に入ると主張し,競合企業の存在や業界内の競争にはひと言も触れなかった。だが,業績が相対的なものだとわかれば,いくらよかれと思って教えたものであろうと,いくつかの原則を実行するだけで成功できるはずがないのは明らかである。成功はつねに他社の動きに影響される。ライバルが多いほど,新しい競合企業が市場に参入しやすいほど,そしてまたテクノロジーの進歩が急速なほど,成功しつづけるのは難しくなる。がっかりするが,それが真実なのである。
フィル・ローゼンツワイグ 桃井緑美子(訳) (2008). なぜビジネス書は間違うのか:ハロー効果という妄想 日経BP社 pp.182
PR