以上のことを考えあわせると,つぎつぎと出版されるビジネス書には,その核心に共通の虚構があるのが見えてくる。すなわち,企業は偉大になることを自由に選択できる,わずかなステップで意図したとおりに偉大になれる,成功は外的要因に影響されることもなくもっぱら自分の意のままに引き寄せることができる,ということだ。これでは大金持ちになる5つのステップとか,2週間で10キロ痩せる方法とか,みずからの内なるパワーに気づこうといったセルフヘルプ本と大差がない。しかも,仮にこれらのことを認めるなら,その逆のこともいえる。会社が偉大にならなかったら,経営者がどこかで舵とりをまちがえたことになるのだ。教えられたステップを無視したか,道を踏みはずしたにちがいない。みずからの意志と力だけで偉大になれるなら,なりそこねるのも自分の責任なのである。
フィル・ローゼンツワイグ 桃井緑美子(訳) (2008). なぜビジネス書は間違うのか:ハロー効果という妄想 日経BP社 pp.214-215
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