企業パフォーマンスを向上させるにはどうすればいいのかという疑問への最良の答えにこれでようやくたどり着いた。リーダーシップや企業文化や顧客志向など,いつも決まって候補に挙がるものは業績アップの要因ではなく,業績のよさから跡づけた理由と考えたほうがいい。それらをとり去れば残るのは2つ,戦略の選択と実行である。前者は,社内環境のほかに顧客と競合企業とテクノロジーを考慮しなくてはならない。だからリスクがある。後者は,同じことをしても組織によって効果が異なるので,成果が確実ではない。安直な攻略法がほしくても,現実のマネジメントは私たちが思う以上に複雑で,心地よいストーリーがささやくよりもはるかに不確実なのである。智恵のある経営者は,ビジネスとは成功の確率を高める方法を見出すことだと認識している。成功が確かなものだとは決して思っていない。企業は適切な戦略を選択し,業務の効率化につとめ,なおかつ幸運に恵まれれば,少なくともしばらくはライバルに差をつけることができるだろう。だが,そうして手に入れたものも,やがては消えていく。現在の成功はつづく成功を保証してくれるわけではない。成功は新しい挑戦者を引き寄せ,そのなかには現在の成功者以上にリスクを厭わない者がいるからである。これでおわかりいただけただろう。ストーリーとして魅力があっても,成功の公式など存在しない。
フィル・ローゼンツワイグ 桃井緑美子(訳) (2008). なぜビジネス書は間違うのか:ハロー効果という妄想 日経BP社 pp.239-240
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