カマキリも,ほとんどの種が待ち伏せ型である。長い湾曲したトゲの生えた超大型の前肢を持っているのはそのためだ。「拝み虫」とも呼ばれるが,これはカマキリが,顔の前に大きな前肢を掲げる習性があることに由来する。その姿が,拝んでいる人に似ているのである。捕食用の長い前肢はバネ仕掛けのような構造になっており,この拝むような姿勢というのは,いわば拳銃の撃鉄を引いた状態にたとえることができる。そこへ獲物がふらふら近づいてくると,トゲつきの肢を瞬時に突き出し,獲物を捕まえる。
カマキリの初期種はもっと痩せており,地面をはい回って獲物を追いかけることもあれば,草に隠れて獲物を待ち伏せすることもあった。その前肢はやや大きめで,見つけたクモや昆虫を素早く捕まえるのに便利だった。だが次第にカマキリは,この祖先から待ち伏せ型へと特化していく。移動能力を高める淘汰の力は弱まり,より遠くの獲物も捕らえられるように,前肢がどんどん大きくなっていった。
ダグラス・J・エムレン 山田美明(訳) (2015). 動物たちの武器:闘いは進化する エクスナレッジ pp.59-60
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