これら待ち伏せ型および忍び寄り型の捕食動物が狩りに成功するかどうかは,武器を素早く繰り出し,即座に獲物の行動能力を奪えるかどうかにかかっている。つまり速さが重要になるが,狩りの成否を決めるのは,動物全体の移動速度ではない。大切なのは,付属器官を動かす速度,すなわち,武器をどれだけ速く動かせるか,である。この場合,たいていは武器が大きいほうが都合がいい。あごなど,獲物を捕まえる武器が長ければ,それだけ遠くの獲物を狙うことができる。武器が大きければ,より多くの反動エネルギーを蓄えられる分厚く頑丈な骨格要素や,より大きく俊敏な筋肉を内部に収容できる。また,武器の端についている鉤や爪は,関節から離れていればいるほど,動きが速くなる。つまり武器は長いほうが,空気や水を切り裂く速度が大きくなる。
ダグラス・J・エムレン 山田美明(訳) (2015). 動物たちの武器:闘いは進化する エクスナレッジ pp.63
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