“フェア”というのは人間的な考え方だが,勝負の結果に一貫性をもたらすため,結果を予測しやすくなるという側面もある。フェアな戦いでは,もっとも力の優れた者が勝つ(この結果が覆されると不正が疑われることになる)。そしてフェアな戦いでは,常に1対1である。有史以来,古代ギリシャ人,ヨーロッパ中世の騎士,日本の武士,アメリカ西部のガンマンなど,いずれの戦いにおいても,名誉や地位や栄光を獲得できる唯一の戦闘形式,それは1対1の決闘だった。
生物の世界においても,1対1の決闘では,通常はもっとも能力の優れたオスが勝つ。しかし複数が入り乱れての戦いになると,そうとは限らない。1対1の対決は,単純で意外性もなく,比較的結果を予想しやすい。こうした戦いで,能力の劣ったオスが能力の優れた大きなオスを倒すのは難しい。かつての兵士同様,力,スタミナ,武器のサイズがものを言うのだ。
ダグラス・J・エムレン 山田美明(訳) (2015). 動物たちの武器:闘いは進化する エクスナレッジ pp.117
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