6500万年前に恐竜が絶滅すると,哺乳類が地上を支配した。とりわけ繁栄したのが,有蹄動物である。ひづめを持つ草食動物は多様化し,グループの規模を拡大し,近縁の系統のクレードに枝分かれしては,やがて消えていった。その歴史には,巨大な武器を持つクレードが満ちあふれている。
ブロントテリウムも当初は現代のコヨーテほどの大きさしかなかったが,瞬く間に,肩までの高さが2メートル以上,重さが9トンを超える巨体に進化した。最初は武器を持たなかったが,後になると鼻の上に,長さ60センチメートル以上になる幅が広くて平らな骨質の角を持つに至った。サイも,最初はイヌ並みの大きさで角もなかったが,後に多様化し,13トンの体と立派な武器を備える巨大生物へと変わった。たとえばケブカサイは,2メートル近い長さの角を持っていた。サイは,全盛期には世界に50種以上が生息していたが,ほとんどが絶滅した。現在は4種が生き残るのみである。
同じころ,鼻の長い有蹄動物も多様化した。初期のゾウはやはり小さく,武器を持っていないが,間もなく150種以上に分かれた。ゾウが具えた牙には,下あごから90センチメートルもの門歯が平らな刃のように前に突き出した“シャベル型”,下あごから下へ湾曲して伸びる“くわ型”,マストドンや現代のゾウに見られる“上あご型”,上あごに2本,下あごに2本の牙を備えた“4本型”などがある。
ダグラス・J・エムレン 山田美明(訳) (2015). 動物たちの武器:闘いは進化する エクスナレッジ pp.130-131
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