浜辺で中型のシオマネキ2匹が戦闘状態に入ったとしても,ほかのシオマネキにはほとんど影響がない。しかし私たち人間の場合は違う。大量破壊兵器はかなり安価になっており,中規模の国家であれば保有できる。まだ保有していないとしても,近いうちに保有できるようになる。こうした兵器の破壊力はすさまじく,どこかで一度でも使用されれば,地球規模で文明が滅びるおそれがある。そのため,たとえ大量破壊兵器が世界の均衡を保つのに欠かせないとしても,いかなる対立も戦争に発展させてはならない。絶対に。しかし,それを食い止めるのはなかなか難しい。現在の政治地図を一瞥しただけでも,恐るべき火種を抱えた紛争地域,今にも全面戦争に発展しそうな対立関係がいくつもある。北朝鮮と韓国,インドとパキスタン,イスラエルとイランなど,互角の力を持つ国同士がにらみ合いを続けている。そしてどの国も,すでに大量破壊兵器を持っているか,間もなく持とうとしている。
ダグラス・J・エムレン 山田美明(訳) (2015). 動物たちの武器:闘いは進化する エクスナレッジ pp.275
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