殺人犯で食人性の性犯罪者であるジェフリー・ダーマーの裁判中,ミルウォーキーの住民は34ある傍聴人席の1つを確保しようと,午前2時から行列をつくった。彼らが睡眠を犠牲にしたのは,ダーマーの犯罪の残虐な詳細を聞くためではなかった。それならテレビやラジオでも聞けるからだ。そうではなくて,人々はこういう凶悪な犯罪を犯す男の顔が見たかったのである。情緒的適応は容貌にあらわれるという見方には長い歴史がある。古代ギリシャ医学の四主液(血液,黄胆汁,粘液,黒胆汁)説では,鬱病患者は黒胆汁が過剰であり,むくんでいて色が浅黒いと書かれている。黒胆汁が多いためにおこるその他の病気にはヒポコンドリー(心気症),てんかん,ヒステリーがあり,その1つ1つが特定の肉体的な兆候と結びつけられていた。
レズリー・A・ゼブロウィッツ 羽田節子・中尾ゆかり(訳) (1999). 顔を読む:顔学への招待 大修館書店 pp.49-50
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