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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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遺伝的複雑さだけでは説明できない

 かつては,人間は単純な生き物に比べればはるかにたくさんの遺伝子をもっているはずだから,いずれ人間行動の遺伝も動物行動の遺伝よりはるかに複雑だということがはっきりするだろう,と考えられたこともあった。しかし,明らかになったのは,そうではないということだった。確かに,人間には数百億の脳細胞があり,302の神経細胞しかない線虫に比べれば,規模の点でも複雑さの点でも桁違いである。人間は推定で約3万5千の遺伝子をもっているが,線虫のゲノムの遺伝子配列を推定してみてわかったのは,この小さな生きものでさえ,約1万7千もの遺伝子をもっているということだった。さらに,人間は,単純な生きものに比べ,そのゲノムのなかに特定の遺伝子のコピーがより多く含まれている。人間には,少なくとも7種類のホスホジエステラーゼの遺伝子があるが,ショウジョウバエはそれが3種類だ。人間には,12を越える種類のセロトニン受容体があるが,線虫ではそれが2つだ。実際のところ,人間の遺伝子の数は線虫の3倍以上だが,遺伝子の種類の数は,そんなに大きく違うわけではない。このように,遺伝的複雑さだけでは,人間の行動の複雑さを説明できそうにない。


ウィリアム・R・クラーク&マイケル・グルンスタイン 鈴木光太郎(訳) 遺伝子は私たちをどこまで支配しているか DNAから心の謎を解く 新曜社 pp.335-336
(Clark, W. R. & Grunstein, M. (2000). Are We Hardwired?: The Role of Genes in Human Behavior. New York: Oxford University Press.)
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