童顔の高齢者ではどうだろう。彼らの性格の印象はとくに興味深い。生涯のこの時期には童顔であるより若くみえることのほうが性格の違いに大きく影響するからである。この老齢層の童顔の人は同齢のおとな顔の人より若くみえればみえるほど,高齢者を弱くて依存的で知的に鈍いものとする老年の固定観念の被害をこうむりにくいと考えられる。童顔の高齢者の若さはおとな顔の高齢者よりも彼らを強く賢く,従順でなくみせる——つまり童顔の固定観念とは反対にみせるのである。童顔は実際,認知される年齢に大きな効果をおよぼす。50代の終わりと60代はじめの童顔の人は同齢のおとな顔の人より若くみえるのである。童顔は人を若くみせるが,童顔であることと若くみえることは厳密に同じではない。たとえば,こどもっぽい大きな目をした丸顔の60歳の人と,目が小さくあごの突き出たおとな顔の同齢の人の場合,童顔の人が白髪としわが多く,おとな顔の人がそうでなかったら,童顔の人はおとな顔の人と同じか年上にみえることがある。
レズリー・A・ゼブロウィッツ 羽田節子・中尾ゆかり(訳) (1999). 顔を読む:顔学への招待 大修館書店 pp.137
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