これまでは,弟子入りこそが芸人になるためのほぼ唯一の道だったところが,ダウンタウン以降,お笑い養成所に入って芸人になることが一般的になった。下積み修行をしなくても,とにかく面白ければ芸人になれる。そういう時代が訪れたのだ。
楽屋で師匠の顔色をうかがったり,芸人たちの人間関係に気を配ったりする必要がなくなった。
そういう時代になったからこそ,基本的なコミュニケーション能力が足りない人間でも,芸人になれる可能性が出てきたのだ。
松本は,そのたたずまいからすでに常人離れしていた。今でもそうだが,彼は面白いことを言うときに決して笑顔を見せない。
憮然とした表情で,ボソッとつぶやくように鋭いことを言う。それが命中してドカンとウケる。
このスタイルに憧れて,数多くの芸人がダウンタウンの真似をした。
そして,誰一人としてダウンタウンにはなれなかった。
ラリー遠田 (2015). なぜ,とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか? コアマガジン pp.106-107
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