あらゆる心理状態には,「アダプティブ・アドバンテージ(変化に適応するための優位性)」がある。従ってどれかひとつがよいと決めてそちらをめざすのではなく,さまざまな感情——とりわけ目を背けがちな感情——の有用性を考え,どんな心理状態でもうまく舵取って生きる能力を身につける方がいい。人はさまざまで,人生の明るい面を見ることが苦手な人もいるし,また逆に,気持ちが沈むことなどめったにないという人もいる。もっと幸福感を増やすべきだとか,ちょっとネガティブ感情を加える方がいいというのではなく,両方が大事だということだ。両方の心理状態を適度に行ったり来たりすることによって,バランスのとれた安定した「ホールネス」を持つことができる。人間に与えられた自然な感情をすべて活かせる人,つまりポジティブ感情もネガティブ感情も受け入れて幅広く活用できる人が,もっとも健全であり,人生において成功する可能性が高い。
トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.9
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