不快と感じて避けがちなネガティブ感情にはいくつか大きな利点があり,そのひとつが,目標達成への執着が薄れることが。悲しみ,欲求不満,自信のなさ,混乱,さらには罪悪感も,そういう働きをする。ネガティブ感情が,いまはブレーキをかけ,じっくり自分の気持を見つめ直し,労力や資源を節約すべきだと教えてくれる。私たちは,達成が望めない信念のために無限に投資を続けてしまいがちだ。望む結果を得る可能性が細る一方なのに,損切りをする決心がつかず,「サンクコスト(埋没費用,投下した労力や資金などが戻ってこないこと)」を考えて止められなくなる。そんな時は,ネガティブ感情のかけるブレーキがとりわけ重要になる。ポジティブもネガティブも包含する「ホールネス」を持つ人たちは,目標に対してもっと柔軟に行動できる。事態がよいペースで進展していれば投資を続け,ダメだと判断すれば見切りをつけて別の目標に切り替えるのである。
トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.36-37
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