「社会的敏捷性」というのは,移り変わる状況を認識し,それぞれの場で求められていることに自分の行動を適応させる能力のことである。社会的に敏捷な人は,行動的で,選択能力があり,自分の置かれた状況に影響力を及ぼすことができる。状況によって,人に優しいことも,罪のない嘘をつくことも,相手に圧力をかけることもある。また有名人の名前を出したり,相手にへつらったり,お世辞を言ったり,助力を申し出たりすることもある。配偶者や恋人を感心させるために,少し前に冷蔵庫を掃除したことをさりげなく伝えたりもする。社会的に敏捷な人たちは,決してマキャベリ的というわけではない。単に「よき人間であれ」という規範よりも,もう少し包括的で柔軟な社会規範に従って行動するのである。興味深いのは,人がルールを破るケースの多くが,自分が得をするためでなく,相手を喜ばせたり,関係を深めたり,大事な目標を達成するためだったりすることだ。
トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.43-44
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