政治経済の波が高まりを見せるにつれ,快適さに対する期待も高まった。幸福はもはやめzすゴールというよりは,健全な精神に欠かせないものと考えられるようになった。前述の「キリストは幸せだったのか」の研究をした大石たちは,グーグルを使って,1800年から2008年の間にアメリカで出版された本の中に,「幸せな人(Happy person)」という言葉がどれだけ出てくるかを調べた。想像がつくように,1800年台と1900年代初めまで,著者たちはこの言葉をまったく使わなかった。それから,「狂騒の20年代」になると,多くの本が「幸せな人」を取り上げるようになり,1990年には一気にそれが盛り上がる。本屋に行けば,幸せな人という言葉が含まれている本をつい買ってしまう。それ以来この言葉の使用は,ピーク時からほとんど減っていない。1990年から2008年までにこの言葉が使われた回数は,それまでの50年間の総計に匹敵する。社会通念が変化したのは明らかだ。
トッド・カシュダン,ロバート=ビスワス・ディーナー 高橋由紀子(訳) ネガティブな感情が成功を呼ぶ 草思社 pp.58-59
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