この本が扱うスモール・サイエンス(小さな科学)は,途方もない道具屋莫大な予算を必要としないから「スモール」なのであって,取るに足りないからではない。なかには紙とペンを手にして懇談会や地元のショッピングモールで記録を取るだけのものもある。研究助手の集団を必要とせず,自分を研究対象にして有益な観察を行うこともできる。さらなる道具を求めるとしたら,ストップウォッチを買うと良い。この研究は自己資金で行うことが可能で,助成金の申請書に記入すること,そしてこの上なく縮小されていく研究資金を巡る長年にわたる気の滅入る競争を幸いにも回避できる。これは素晴らしいことだ。そのような研究は科学的権威を欠くため,助成金の管理者や政治家たちが資金援助の熱意をかき立てられるとは思えない。
ロバート・R・プロヴァイン 赤松眞紀(訳) (2013). あくびはどうして伝染するのか:人間のおかしな行動を科学する 青土社 pp.15
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