サロヴェイとメイヤーは,EIを,従来のIQの範疇では把握できない別種の「能力」(ability)であると仮定し,いわゆる4枝モデル(four branch model)として概念化してきています。それは,EIが,知覚・認知的に最も低次の水準から最も高次の水準に至るまで,順に階層をなして,
(1)感情の知覚・同定
(2)感情の促進および思考への同化
(3)感情の理解や推論
(4)自分や他者の感情の制御と管理
という4種の下位要素(4本の枝)から構成されるとするものです。もう少し詳しくお話ししましょう。
(1)の要素は,その時々の自身の感情の知覚・同定および,小説や映画などの登場人物も含めた他者の感情の知覚・同定を,その真偽も含めていかに的確になし得るかということと,自身の感情や感情的ニーズを他者に対していかに正確に表すことができるかということに関わる能力です。
(2)の要素は,さまざまな感情や気分を,自発的に自身のなかに誘発したり,想像したりすることによって,意思決定や問題解決あるいは創造性も含む自身の思考や行動にどのように活かすことができるかということに関わる能力です。
(3)の要素は,感情の法則性の理解,たとえば,1つの感情が他の感情とどのように関連するか,また複数の感情がどのように混じり合う可能性があるか,さらには感情がどのような原因から発し,またどのような結果をもたらすかといったことに関する理解・推論能力です。
(4)の要素は,正負両面の感情に対して防衛なく開かれた態度を有し,時と状況に応じて自身の感情をいかにうまく制御・調整できるか,また他者の感情をいかにその文脈に合わせて適切なものに導き,管理できるかといったことに関わる能力です。
遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.
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