特性としてのEIに関しても,すでにビッグ・ファイヴをはじめとして,さまざまなパーソナリティ指標との関連性が検討されています。たとえば,(混合モデルの指標とはされていますが)実質,特性としてのEIを測定するためのツールであるバーオンのEQ-iに関しては,その下位尺度とビッグ・ファイヴの各特性との間にさまざまに有意な相関が見出されることが数多くの研究によって報告されています。もちろん,特性として仮定されている以上,同じく特性としてあるパーソナリティと一定の関連性を有することは半ば自明のことといえるわけです。
しかし,そこで問題になるのは,その相関があまりにも高すぎるということです。EQ-iとパーソナリティ指標との相関は,特に(ネガティブ感情に密接に関連する)情緒的不安定性や(ポジティヴ感情に密接に関連する)外向性の次元などを中心に,時に0.8にも達するような不自然に高い値を示す場合が,かなり頻繁に認められることが知られています。すなわち,そうなると,そもそも両者にはほとんど概念的独立性が成り立っていないことになり,結局のところ,EQ-iに従来のパーソナリティ測度にはない独自性を仮定してみること自体,実質的に非現実的であるということになってしまうのです。
遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.
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