ゴールマンやバーオンなどの混合モデルで,特性としてのEIとされてきたものの中核に,正負両方の感情に関わる気質やパーソナリティがあることは,先にもふれた通り,すでに多くの研究者が指摘するところです。そして,繰り返しになりますが,それは本来,EI(感情的な知能)として概念化されることに必ずしもそぐわないものです。むしろ,それは,より直接的に感情的特性(emotional trait)と呼ばれるべきものです。私たちは元来,事象や刺激に対してどれだけ敏感に反応し,感情的に賦活されやすいか(emotional sensitivity),またネガティヴな感情がどれだけ経験されやすいか(emotionality),あるいはまた共感性なども含めたポジティヴな感情がどれだけ発動されやすいか(emotionateness)といったところに,広範な個人差を有していると考えられます。
遠藤利彦 (2015). こころの不思議—感情知性(EI)とは何か 日本心理学会(監修) 箱田裕司・遠藤利彦(編) 本当のかしこさとは何か—感情知性(EI)を育む心理学 誠信書房 pp.1-19.
PR