別に専門家を揶揄しようというのではない。相場の予測は不可能(もしくは専門家でも極めて難しい)であり,金融は単純明快な因果関係だけできれいさっぱりと説明できるものではないということを言いたいのである。にもかかわらず,なぜ専門家が自信たっぷりに豊富な知識を披露しながら後講釈を続けるのかといえば,それはニーズがあるからに他ならない。行動ファイナンスの大家の1人であるダニエル・カーネマン(2002年ノーベル経済学賞受賞)によれば,人は単純明快な因果関係による説明を好み,それを真実だと思い込むようにできている。誰か全てを理解していそうな人に,わかりやすい説明をしてもらいたいというニーズがあるからこそ,専門家は,それが本当であるかどうかは別として,単純明快な説明を試みるのである。本当は専門家でも予測はできないし,その後講釈も正しいとは限らないことを知っていれば,そうしたパターン化された解釈や思い込みに対して免疫もでき,金融や相場に対する見方も変わってくるはずだ。
田渕直也 (2015). だからあなたは損をする 投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について ダイヤモンド社 pp.13-14
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