巨大DNAウイルスの特徴は,その複製に関していえば,宿主細胞の細胞核ならびに細胞質で複製が行われ,最終的に宿主細胞の細胞質でウイルス粒子が成熟することである。
巨大DNAウイルスは,自ら「複製」と「転写」の遺伝子を揃えているため,基本的には宿主細胞の細胞核の機能には依存せず(その一時期を細胞核で過ごすにもかかわらず),「翻訳」以外の過程を遂行することができる(パンドラウイルスのような例外もある)。
構造的な特徴としては,数十万bpという,小さな細菌なみのゲノムサイズをもっていること,数百個以上ものタンパク質を作る遺伝子数を誇ること,そして,ウイルス粒子内(カプシドの内側)に脂質二重膜をもつことが挙げられる。
巨大DNAウイルスが宿主とする生物は極めて多様で,哺乳類,鳥類,両生類,魚類などの脊椎動物のみならず,昆虫,植物,藻類,アメーバなど,ほぼすべての真核生物を宿主とするものが存在すると考えられている。もちろん,ある巨大DNAウイルスの宿主は基本的には1つ。つまり,それだけ多様な種類の巨大DNAウイルスがいるということだ。
したがって,当然といえば当然かもしれないが,巨大DNAウイルスのゲノム解析の結果,その保有する遺伝子のうち多くは,宿主の遺伝子を取り込んだものであると考えられている。ある生物(ここではウイルスも含む)の遺伝子が他の種類の生物(ここでもウイルスを含む)のゲノムに移る(コピーされる)ことを,遺伝子の「水平伝播」といい,巨大DNAウイルスの長い進化の過程では,数多くの水平伝播が起こってきたとされる。
武村政春 (2015). 巨大ウイルスと第4のドメイン:生命進化論のパラダイムシフト 講談社 pp.66-67
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