1977年,生物学者カール・ウーズ(1928〜2012)は,この16S RNA遺伝子の塩基配列を解析し,それまで五界説において「モネラ界」としてひとくくりにされていた原核生物が,じつは大きく異なる2つのグループに別れることに気付いた。
1つは,私たちの身の回りに多く生息し,時には病原体となる原核生物グループ。すなわち大腸菌やブドウ球菌,肺炎球菌,赤痢菌といった病原菌や,乳酸菌,納豆菌といった食品製造に使われる細菌など,私たちに比較的身近なものがこのグループに含まれる。
そしてもう1つは,私たちの身の回りにはあまり生息せず,どちらかといえば高温の熱水中や極めて高い塩濃度の環境下,硫黄を大量に含む環境など,極限的な環境に生息するような原核生物のグループである。
そこでウーズは1990年,前者を「細菌」(Bacteria),後者を「古細菌」(Archaea)とよぶことを提案した。原核生物が,細菌と古細菌という2つのグループに分かれるというわけである。一方,「真核生物」(Eukarya)については,これを全体の1つのグループとした。
そしてこの3つを,「界」(kingdom)よりも上のレベルのくくりという位置づけで,「ドメイン(超界)」(domain)とよぶことを提案したのである。
武村政春 (2015). 巨大ウイルスと第4のドメイン:生命進化論のパラダイムシフト 講談社 pp.82-84
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