ウイルスを生物とみなさない立場の人間は,ウイルス界全体について議論し,ウイルスを生物とみなす立場の人間は,時にはウイルス界全体について議論する場合もあるが,基本的には巨大DNAウイルスに限って議論する。
これでは議論はかみ合わない。いずれは冷静に,少なくとも巨大DNAウイルスに関する科学的な議論と検証をすすめていくべきであろう。
そうした議論が成立するのであれば,やがては「生物の基本単位とは何か」という話にまで広げる必要があるかもしれない。なぜなら,ウイルスが生物でないという立場にあったとしても,「生物である細胞だったものが余計なものをそぎ落としてウイルスになった」と考えるのであれば,「かつては生物だった」ことに異議を唱えることはないはずで,そうなると,じゃあいったいいつの時点でそれは「生物でなくなったのか」という問題に向き合う必要があるからである。
武村政春 (2015). 巨大ウイルスと第4のドメイン:生命進化論のパラダイムシフト 講談社 pp.111
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