私たち人間が,いったいどれほどのことを知っているというのだろう。
知識というものをもち始めてから,私たち人間はたかだか数千年の時しか経験していない。それに比べて,生物の歴史は気が遠くなるほど長く,深遠だ。
さらに,生物学の始まりをアリストテレスとするならば,私たち人間は,その生物を学問の対象として見始めてから,たかだか2400年しか経っていないのである。
その短い時間に私たちが見聞きした事物があり,それを「科学的」という言葉で表現される手法で調べたその総体として,いまの生物学があったとしても,だ。
教科書に掲載されているという事実があるからといって,あるいはほとんど全ての「科学者」と称する人たちが——彼らももちろん人間だ——,一様に「うむ,そうである!」と断じる事柄だからといって,私たちが「定説」であるとみなしている全ての事柄が覆されないという保証は,どこにもない。
武村政春 (2015). 巨大ウイルスと第4のドメイン:生命進化論のパラダイムシフト 講談社 pp.200
PR