どこで,どんな作物を栽培する際にも必ず問題になる,菌学上の3つの考え方,もしくは原則についえ話しておく必要がある。
第1は,「菌は単一栽培された作物に引き寄せられやすい」ということである。大量に栽培される作物は,抵抗するか,攻撃されるか,いずれにせよ遺伝的に全く同じ性質を持っているので,農場は菌にとっておいしい餌があふれる海になりかねない。
第2は,「自然分布の外で栽培されると,作物はよく育つ」ということである。ただし,栽培植物に病原菌がついていることがなく,原産地で有害だった菌の侵入を完全に防ぐことができれば,の話だが……。あまりいいたとえ話ではないかもしれないが,遊園地の動物園にウサギを運ぶ仕事を請け負ったボランティアグループが,ウサギを入れた檻をトラックに積むとき,隅にいた狐を追い出すのを忘れるようなもの,とでもいえばいいだろうか。
第3は,農家に忠告してもしなくてもいいようなことだが,「自然分布域の外で育った作物は,新しい場所にいるあらゆる種類の病害虫に襲われる危険性が高い」ということである。
ニコラス・マネー 小川真(訳) (2008). チョコレートを滅ぼしたカビ・キノコの話:植物病理学入門 築地書館 Pp.146-147.
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