心理学者のポール・ブルームが言及しているように,今日でさえ,たいていの大人は盲目的な心身二元論者で,心はおおむね,あるいは完全に脳の働きとは別個のものと見ていることを,統計データが示している。脳画像研究がこれほどマスメディアの関心を集める理由も,この盲目的な二元論で説明できるかもしれない。そうした研究の結果は,多くの人には意外なもの,いや,魅惑的なものにさえ見える(「すごい。気分の落ち込みというのは,本当は脳の中のことなんですか?それに,愛情も?」)。「私たちは,自分は非物質的なものだと直観的に思っている。だから,思考という行為を行なっている自分の脳を目にするとショックを受け,果てしない興味を掻き立てられるのだ」とブルームは述べている。
サリー・サテル スコット・O・リリエンフェルド 柴田裕之(訳) (2015). その<脳科学>にご用心:脳画像で心はわかるのか 紀伊國屋書店 pp.39-40
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