人間の行動についての,脳に関連した主要な理論はいくつもあるが,最初期のものの一つが骨相学だ。骨相学は,1800年代にヨーロッパとアメリカ全土に広まった。高い評価を得ていたドイツの解剖学者フランツ・ヨーゼフ・ガルが開発した骨相学は,脳機能と人間行動の科学の構築を試みた。ガルは,心は完全に脳内部にあると信じていた。骨相学者は,機知や好奇心の強さ,情け深さといった何十もの特性を反映しているという触れ込みの頭蓋骨の凹凸を検査することで性格を「読んだ」。よく発達した器官は,頭蓋骨の当該領域を内側から押し,外表面を隆起させるとガルは考えた。対照的に,頭蓋骨の窪みは,とりわけ脆弱な器官の証で,そうした機関は正常な大きさに成長しそこないはしたものの,筋肉と同じで,鍛えれば発達させられるという。当時の人々は自分の生まれつきの才能を知り,自分の脳に最適の種類の仕事や人生の伴侶に関する助言を受けるために,繰り返し骨相学者に診てもらった。
サリー・サテル スコット・O・リリエンフェルド 柴田裕之(訳) (2015). その<脳科学>にご用心:脳画像で心はわかるのか 紀伊國屋書店 pp.41
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