嘘を検知できないというのは,嘘だらけの世界でははなはだ不都合だ。人は,10分以上続く社会的相互作用の5回に1回で嘘をつくと認めている。これは,平均すると少なくとも1日1回になる。ある人が徹底的に文献を調べたところ,英語の語彙には「collusion(共謀)」「fakery(ごまかし)」「malingering(仮病)」「confabulation(作話)」「prevarication(二枚舌)」「exaggeration(誇張)」「denial(否認)」など,嘘という含みのある単語が112個あったという。イギリスの精神科医で嘘の専門家,故ショーン・スペンスは,どの文化にも,正直を意味する単語よりも嘘を意味する単語の方が多いことに気づいた。欺き方はいくらでもあるが,真実を語る方法は1つしかないからかもしれない。
サリー・サテル スコット・O・リリエンフェルド 柴田裕之(訳) (2015). その<脳科学>にご用心:脳画像で心はわかるのか 紀伊國屋書店 pp.130
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