ことによると,重要なのは社会とのかかわりの数でも他者が実際に手助けをしてくれる度合いでもなく,社会的なやり取りが社会的なつながりに対する各人特有の主観的な欲求を満足させる度合いではないか,と私たちは考えた。毎日決められた時刻に日誌に記入してもらうという,以前行われた研究から,他者と過ごす時間の長さや他者とかかわる頻度が,孤独感の度合いを予測するのにはあまり頼りにならないことがわかっていた。孤独感との関係がとりわけ強かったのは,ここでも質の問題,つまり,他者との交わりにどれだけ意義があるかという,本人が下す評価だった。とはいえ,人との交わりに意義を見出せないことが,肥満や運動不足,癌の原因となる喫煙と肩を並べるほどの害をもたらしうると言うのは,やはり大げさに思われた。
ジョン・T・カシオッポ&ウィリアム・パトリック 柴田裕之(訳) (2010). 孤独の科学:人はなぜ寂しくなるのか 河出書房新社 pp.129
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