「発表報道」とは,官庁や企業,各種団体,個人などが,記者会見やプレスリリースなどを通して情報を提供,それを受けたメディアが,その内容をほぼそのままの形で報じるものを指す。
「官房長官は……」「厚労省の統計によると……」などというスタイルのニュースは,みなさんにもおなじみのものだろう。
政治や災害情報,景気の動向,原発のトラブル,交通情報など,国民の「知る権利」に関わる大事な基本情報も多い。また「新型携帯電話売れ行き好調」「銀座に大型デパート開店」など,発表側の「PR」に近いものもある。
一方,発表者にとって喜ばしい内容のものばかりではない。
不祥事の謝罪や釈明会見,「欠陥製品の回収のお願い」,有名人の離婚会見といった,追いつめられ退路を塞がれて,仕方なく「発表」する場合もある。
このように内容はさまざまだが,新聞やテレビニュースなどの大半が,これら発表された内容をニュース・ソースにして出稿しているというのが現実だ。実際,私が所属するテレビ局でも,記者の大半が担当(官公庁,政党,警察,企業など)を持ち,記者クラブを通してニュースをカバーしている。
それに対して,記者が自ら調べて判断していくのが「調査報道」ということになる。
発表されていないものを掘り起こす——それが調査報道の第一の条件なのだ。
清水 潔 (2015). 騙されてたまるか:調査報道の裏側 新潮社 pp.73-74
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