安全地帯から抜け出し,新しい体験をしなさいとよく言う。しかし,これほど抽象的なアドバイスはないと常々思う。私にとっては,安全地帯を抜け出すといえば,8時間ずっとデスクに座って画面を見つめるとか,コーヒーを飲むことかもしれない(コーヒーはどうも苦手なのだ)。
安全地帯からの本当の脱却とは,新しい物事に挑戦し,新しい人々に出会うことだ。そのメリットは十分に実証されている。では,安全地帯から抜け出すのも,凝集性の高いネットワークを築くのも,おおむね良いことだとすれば,どちらを選ぶべきか?多くの研究者は反論するだろうが,「白か黒かではない」というのが答えだ。大半の時間を一緒に過ごす密な集団を築くと同時に,多様なネットワークにも属して,ときどき新しい情報を仕入れることもできるのだ。
ベン・ウェイバー 千葉敏生(訳) (2014). 職場の人間科学:ビッグデータで考える「理想の働き方」 早川書房 pp.117
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