データの入手可能性が決まると,進むべき正しい道は,次の2つの問いを投げかけることである。測定値は妥当か。測定値は信頼できるか。妥当性の概念は測定が正確かどうかに関係し,信頼性の概念は測定値が毎回同じように不正確あるいは正確かということに関係する。したがって,信頼性は妥当性とは異なるのである。測定値に予測可能な誤りがあった場合,この誤りは測定値を無効にするが,測定値はそれでもまだ信頼できる。1人当たりGDPに関していえば,水準となる推計が不正確であったとしても,この不正確さが時を越えて同じであるとしたら,それは経済変化wp理解するために有用であり続けるのである。同様に,すべての国の国民所得が同一の誤りによって間違って測定されたとしても,各国間の比較は行うことができる。だが,残念ながら,アフリカにはこれは当てはまらない。アフリカの開発統計には妥当性と信頼性の両方に問題がある。その基本的な理由は,GDPが,大部分,記録されていない経済を集計しているということにある。統計学的推論によれば,いったん妥当な測定を行えば,つまり,いったんすべての経済活動が算定されるなら,以前に記録されていない経済活動だけでなく,すべての「新しい」活動が「経済成長」であると理解されることになる。包括性からはほど遠いが,それは予見可能な将来に到達可能な目標ではないのだろう。したがって,すべてのGDP統計は,真理性と妥当性の両方の問題を抱えている。
モルテン・イェルウェン 渡辺景子(訳) (2015). 統計はウソをつく:アフリカ開発統計に隠された真実と現実 青土社 pp.49
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