総所得あるいは成長の傾向を推計するための基本的出発点は,人口を数えることである。サハラ以南アフリカの国民経済計算担当部署の標準的方法では,人口データを,定期的にデータを収集できない経済部門の測定のための乗数として使っている。非公式部門や自給自足生産では,これらの部門の国民経済への貢献を計算するのに,一人当たりの量を使って推計が作られているかもしれない。加えて,これらおよび他の部門で,経済成長はしばしば人口増加に比例すると考えられている。人口データはもちろん,開発に関する従来型の測定——実質一人当たり所得——において中心的要素であり,正確な計算なしには,教育や保健における一人当たりの傾向について何を言っても意味がない。このように,人口についてのデータは開発の測定や実践にとって不可欠なのである。人口推計はさらに,政治にも関係しており,国勢調査は選挙の選出議員数や財政支出にも直接影響する。そのため,人口の計算は,とくに権力が激しく争われている国や,国の監視力が弱いところでは議論の的となりやすい。
モルテン・イェルウェン 渡辺景子(訳) (2015). 統計はウソをつく:アフリカ開発統計に隠された真実と現実 青土社 pp.111-112
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