ドイツのケッセル大学を中心とした研究グループは,他者の心のなかを想像することができれば,サイコパシー傾向が高くても,攻撃的な行動にはつながらないという可能性を見いだしました。
コミュニティの15〜24歳の104名(男女含む)を対象とした調査が行われました。子供時代の両親との関係を思い出してもらったときに,親の心のなかを想像するような発言をする傾向のある若者は,サイコパシー傾向が高くても,能動的な攻撃は強くならないことがわかりました。能動的な攻撃というのは,攻撃を自分の望むものを得る手段としてもちいる傾向です。
心のなかを想像するというのは,「心のなかは見えない」「それぞれの心は独立だ」といった行動を,「心」の観点から理解する傾向です。
このとき,子供時代の両親との関係では,とくにつらかった記憶を思い出してもらうことで,単に他者の心を理解しているということを超えて,つらい感情がともなう状況でも,養育者の心を察していられるかを見ています。
心のなかを想像する能力は,環境の影響も大きいとされています。つまり,治療につながる糸口として有力かもしれません。
杉浦義典 (2015). 他人を傷つけても平気な人たち 河出書房新社 pp.171-172
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