テネシーをはじめ諸州の根本主義者が進化論教育に反対したのは,子どもたちの宗教——ひいては家族すべての信仰——を進化論者,知識人,コスモポリタンの害から救おうとしたためである。この点で,根本主義者にも同情の余地があるといえるだろう。彼らがこの論争を,家庭や家族を守るためと考えていた——この点は現代でも変わらない——とすれば,彼らの過激さも理解することができる。そのいい例が,原始バプティスト派の信者でテネシー州議員でもあったジョン・ワシントン・バトラーである。彼はテネシー州に進化論教育に反対する法律を導入したが,それは,彼の出身地の若い女性が大学へ行き,進化論者になって帰ってきたという話を聞いたからだった。この話で自分の5人の子どもたちの将来を案じはじめたバトラーは,1925年にみずからの願望を州の法律とすることに成功した。
リチャード・ホフスタッター 田村哲夫(訳) (2003). アメリカの反知性主義 みすず書房 pp.110-111
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