“安全”と“安心”は文字にすると似てるけど,水と油といってもいいほどに異なる概念です。
その決定的な違いは,危険(リスク)に対する態度にあります。
安全を実現するためには,つねに現実の危険と向き合わねばなりません。どんな危険がどこにどれだけ存在するのかを,つねに把握して可能なかぎり回避する,これがホンモノの安全対策。
かたや,安心はこころの状態にすぎません。感じかたには個人差があります。アタマの悪い人ほど,現実の危険から目を背け,儀式やげん担ぎを懸命にやって,危険を遠ざけたと“安心”しがちです。
安心は,安全であることを保障しないのです。安全の実現のためには,安心することは許されません。
ところが近年の日本では,この正反対の概念をセットにした“安全・安心”という矛盾した言葉を,到るところで目にするようになりました。
パオロ・マッツァリーノ (2015). 「昔はよかった」病 新潮社 pp.124-125
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