ポルノは,人を満足させるというより興奮させる。わたしたちの脳には,ふたつの快楽システムが別個に存在する。ひとつは,興奮による快楽。そしてもうひとつが満足による快楽だ。
興奮のシステムは,「欲求の」快楽と関係している。セックスやおいしい食事といった,欲しいものを想像することによって得られる快楽だ。ドーパミンと大きく関係していて,これによって緊張度が高まる。
もうひとつの快楽システムは,なにかを完了しつつある満足から得られるものだ。実際のセックスの最中や,食事をしているときに訪れる,気持ちを落ちつかせるような,達成感のある快楽である。この場合は,エンドルフィンの放出が基本になっている。鎮静作用のある,平和な幸福感をもたらす物質だ。
ポルノは,性的な対象をいくらでも提供し,欲求のシステムをひじょうに活発にするものだ。ポルノを見ている人は,写真やビデオをもとに,脳に新しいマップを作っている。脳には「使わなければ失う」という原則が適用されるので,マップができると,わたしたちはなるべく使おうとする。1日中すわっていると,動きたくて体がうずうずしてくるように,わたしたちの感覚もまた刺激を求める。
ノーマン・ドイジ 竹迫仁子(訳) (2008). 脳は奇跡を起こす 講談社インターナショナル p.135
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