心理学の研究によって明らかになったのは,ナルシシストやサイコパスの人たちが,往々にして初対面の人に非常に良い第一印象を与えるという事実で,これはやっかいな問題です。でも「フェーズ2」というプロセスがあるおかげで,私たちは出会った人の第一印象にとらわれず,本当はどういう人なのか,さらに認識を深めることができるのです。
一般的に「フェーズ2」では,相手の行動が何らかの状況によって引き起こされていて,その状況にあれば,他の人でも同じ行動をとるのではないかと考えます。相手の行動に関して自分が最初に行なった理由づけを疑ってかかり,自分の出した結論がバイアスで歪んでいないかをチェックしようとします。意識的な観察者は,自分の心が自然に生み出した結論にも介入して修正しようとします。
「フェーズ2」はよく「修正フェーズ」とも呼ばれます。最初の印象を修正するのは容易ではなく,努力を要し,自動的には行われません。したがって認識する側には,相手を理解しようとするエネルギーと時間のほかに,それを行なうためのモチベーションが必要になります。このどれかの要素が欠けていると,認識者は「フェーズ1」で作り上げた最初の印象を持ち続けることになります。「フェーズ2」にいくには,よほど注意を喚起するものが必要です。しかし資産運用アドバイザーが私たちのお金をすべて盗み取って起訴されてから気づいても,万事遅すぎるわけです。
ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 高橋由紀子(訳) (2015). だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 早川書房 pp.77-78
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