ここでも,当人がこういう自問自答をしていることを自覚しているとは限りません。ほとんどが,瞬間的に無意識のレベル(フェーズ1)で起きるからです。ただ,ここでお話しするのは,「フェーズ1」でも,その人に何らかの「アジェンダ」がある場合です。つまり単に相手の印象をつくり上げるだけでなく,相手が敵か味方かをはっきりさせるという目的があるときです。
では,あなたを判断しようとする人たちは,その答えをあなたのどこに見出すのでしょうか。何十年もの研究の結果が示すのは,対象の特質の中でも特に2つの側面に,最初から注意が集中するということです。それは人間的な温かみと能力です。「温かみ」,つまり親しみやすさ,誠実さ,思いやりなどは,その人が相手に対してよい意図を持っていることの表れととらえられます。「能力」,つまり知性,スキル,優れた仕事ぶりなどは,その気になれば自らの意図を実行に移せることを意味します。能力のある人は,価値ある味方にも,怖い敵にもなりうるというわけです。一方で能力があまりないと思われた場合には,関心を持たれたとしても,同情や蔑みの対象でしかありません。
ハイディ・グラント・ハルヴァーソン 高橋由紀子(訳) (2015). だれもわかってくれない:あなたはなぜ誤解されるのか 早川書房 pp.88
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