「DVの加害者は家庭でわがままに育てられた人が多いのです。『自分は何をしても許される』という特権意識や全能感を持ち合わせているため,『やってはいけないこと』と知識では分かっていても道徳観念としての理解はなく,事の重大さに気づける人は極めて少ない。特に旧世代には家制度の残滓がいびつな形で意識の中に残っていることも多く,根底には『男女平等などとんでもない』という根強い差別意識もあるのです。高齢者の離婚問題は,こういった理屈で割り切れない問題と対処せざるを得ず,解決は相当な困難を伴います。最悪の場合は『戦うより相手が死ぬのを待った方が早い』というような事態にも陥りかねません。しかし,それでは残された人生を相手への恨みだけで,相手の死を願いながら生きていくことになり,決して幸せとは言えないでしょう。人は幸せに生きた者が勝ちなのです。『死ぬまでに自分の人生を取り戻したい』という思いがあるならば,逃げ出さずに進むべきではないでしょうか」
新郷由起 (2015). 老人たちの裏社会 宝島社 pp.96-97
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