分かりやすい例として,彼は「マンモス狩り」を挙げる。
「太古の昔の時代にはマンモスを狩れる人がヒーローであり,一番求められる人材でした。現代で成功者とされるIT起業家がもし,その時代に生まれたとしたら,果たしてどれだけの能力を発揮出来るでしょうか?もしかしたら現在,排他されている人の中にマンモスを倒す卓越した能力を持っている人がいるかもしれない。今の時代に求められる労働が出来ないからといって,その人たちすべてを不要視する思考は,実は大変危険なのです」
ほんのわずかな時代のズレや環境の変化で,持てはやされ,大事にされる人が万華鏡のように入れ替わる。未来永劫,安泰かつ保障される職業や生き方などない。時の流れとともに目まぐるしく変わる“花型の職業”がそれを何より物語っているではないか。老いた自分に果たして何が出来るのか,どれほど時代に求められるのか,一体誰に分かるというのか。
新郷由起 (2015). 老人たちの裏社会 宝島社 pp.153-154
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