ちなみに,誰にも看取られずに一人で息絶える死に様について,当初は「孤独死」と呼ばれていた。数年前には各種メディアで大々的に報じられるようになり,その語感のセンセーショナルな響きからも広く一般に名称が認知されたが,のちに政府や行政も含めて言い方を「孤立死」と改める動きが続いている。
というのも,一人でいることが「孤独」(=頼りになる人や心の通じる人がなく,一人ぼっちで寂しいこと)であるかどうかは本人の主観の問題であり,外部から特定できるのは「孤立」(=一人だけでいること)の状況のみである,との見解からだ。
一人でいることを選び,楽しんで過ごしている人と,誰からも相手にされずに見捨てられている人とは違う。
社会参加を続け,周囲とも日常的な交流があったが,一人暮らしでいたため,たまたま死の瞬間が一人の時に訪れて,すぐには発見されなかったケースと,自ら他者を拒み,打ち捨てられて社会的に孤立したまま一人で絶命し,長い間気づかれなかった場合とでは意味は大きく異なる。
こうした実情を区分したり包括したりして語るのは困難なため,一括して「孤立死」(=一人の状態で亡くなった死)と呼ぶ流れが出来つつあるのだ。
新郷由起 (2015). 老人たちの裏社会 宝島社 pp.165-166
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