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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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オーストラリアのウチワサボテン

18世紀の後半,ウチワサボテンとコチニールカイガラムシがオーストラリアに持ち込まれた。一大コチニール生産地を作ろうという目論見だった。その構想は実現しないままついえたが,ウチワサボテンは根付いた。園芸種として庭に植えられたものが,人の手を借りなくてもどんどん繁殖し,広がっていった。1900年には1万6000平方マイル(約4万960平方キロ),つまりニュージャージー州の面積の2倍ほどの牧草地がウチワサボテンに侵食され,さらに1925年までにはニュージャージー州の実に12倍にあたる面積の土地を覆いつくして,さらに広がる勢いだった。侵食された土地は事実上使いものにならなくなり,しかもその半分は,棘だらけの植物が密生して,人間も牛も羊もカンガルーも,文字通り足を踏み入れることさえできなくなっていた。ウチワサボテンの原産国,西半球では,これほどの異常繁殖はつとに見られなかった。最終的にオーストラリアの昆虫学者たちは,ポール・デバックが指摘しているように,ウチワサボテンの異常繁殖は,西半球でサボテンにつく虫がオーストラリアにはいないからだと結論づけた。そこで,サボテンを餌とする昆虫が新世界の各地から移入された。中にはコチニールカイガラムシの仲間も含まれていたが,効果絶大だったのは南米から移入されたサボテンガ(メイガの一種)なるうってつけの名前のついた蛾の幼虫だった。1937年には,サボテンの最後の密生地もサボテンガの幼虫が,ほんの小さな群落にまで食い滅ぼしてしまった。今もオーストラリアのウチワサボテンは,主にサボテンガが手綱をしめ続けているおかげで,ところどころに点在するだけになっている。そして牛も羊もカンガルーも,かつては荒れ野でしかなかった土地で,いまはのんびり草を食んでいる。

ギルバート・ワルドバウアー 屋代通子(訳) (2012). 虫と文明:蛍のドレス・王様のハチミツ酒・カイガラムシのレコード 築地書館 pp.83
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