西洋人の中にも,わずかながら昆虫食への偏見を捨てる例外はある。1999年に発表した長い評論文において,デフォリアートは「西洋人であっても,先住民の伝統食文化に触れると往々にして熱烈な愛好家になる」と書いている。その例として彼は,近年のオーストラリアで「奥地の食べ物」,すなわちオーストラリア先住民の食への関心が爆発的に高まっていて,その中には昆虫食も含まれることを紹介している。「奥地の食べ物は,観光客がよく訪れるホテルやレストランで日増しに人気を集めるようになってきている」うえ,シドニーの洒落たレストランでもメニューに加えられるようになっている。中でも人気のある虫は,オオボクトウの幼虫だとロン・チェリーはいう。これはキクイムシの一種で,ボクトウガの仲間だ。ノーマン・ティンデールによれば,「熱した灰に包んで軽く焼くと,グルメもうならせる美味」だという。
ギルバート・ワルドバウアー 屋代通子(訳) (2012). 虫と文明:蛍のドレス・王様のハチミツ酒・カイガラムシのレコード 築地書館 pp.155
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