コンピュータ科学者たちにとって,「20の質問」ゲームには特別な魅力がある。このゲームでは,プレーヤーの1人があるものを思い浮かべ,ほかのプレーヤーたちは20個以下のイエス・ノーで答えられる質問に対する答えからそのものが何かを当てなければならない。あなたに20の質問をしてくる小さな携帯電話機さえ売っている。このゲームは,主として子どもを楽しませるために使われるものだが,大人がやっても意外に面白い。ゲームを始めて数分経つと,このゲームには「よい質問」と「悪い質問」があることがわかってくる。よい質問は大量の「情報」(どのような意味であれ)を与えてくれるのに対し,悪い質問は手がかりを与えてくれない。たとえば,最初の質問として「それは銅製ですか?」と尋ねるのはうまくない。答えが「ノー」だったら,可能性の幅がほとんど狭まらないからだ。良い質問と悪い質問を見分ける直観は,情報理論という魅力的な学問分野の核心である。そして,「決定木」というシンプルで強力なパターン認識テクニックの核心である。
ジョン・マコーミック 長尾高弘(訳) (2012). 世界でもっとも強力な9のアルゴリズム 日経BP社 pp.138
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