私たちが使ってきた表のように,相互につながりを持つ表にすべてのデータを格納するデータベースを「リレーショナル」データベース(関係データベース)と呼ぶ。リレーショナルデータベースは,IBMの研究者,E.F.コッドが1970年に書いた「A Relational Model of Data for Large Shared Data Banks」というおそろしく強い影響を与えた論文のなかで推奨したものである。科学分野におけるもっとも優れた発想にはよくあることだが,リレーショナルデータベースは,あとから考えるとずいぶん単純に見える。しかし当時は,情報の効率のよい保存と処理に向かって非常に大きな1歩を踏み出したものだったのである。リレーショナルデータベースに対するほどあらゆる問い合わせへの解答としての仮想テーブルは,ごく一握りの操作(先ほど示した「選択」,「結合」,「射影」などの関係代数の演算)だけで生成できる。そのため,リレーショナルデータベースは,効率のよい構造に作られた表にデータを格納する一方で,別の形でデータが格納されていなければ答えられないように見える問い合わせにも仮想テーブルトリックで答えられる。
リレーショナルデータベースが大部分のeコマース活動で使われているのはそのためである。何かをオンラインで購入するたびに,あなたは製品,顧客,個々の売買契約についての情報を格納するリレーショナルデータベースの一連の表を操作している。サイバースペースでは,それと気づきさえしないうちに,私たちはリレーショナルデータベースに囲まれているのである。
ジョン・マコーミック 長尾高弘(訳) (2012). 世界でもっとも強力な9のアルゴリズム 日経BP社 pp.221-222
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