研究の末,グラフマンは,可塑性には4種類あるとした。
1番目は「マップの拡大」。前述したように,日々の活動の結果として脳の境界領域で多く見られる。
2番目は「感覚の再配置」だ。ある感覚が閉ざされたとき,たとえば視覚に障害が生じたときなどに起こる。視覚野で通常の情報入力がなくなると,触覚などの感覚があらたに情報を受けとるようになる。
3番目は,「補償のマスカレード」。これは,ある作業をこなすのに,脳にはいくつかの方法があるという性質を利用したものだ。ある場所から別の場所へ行くために,視覚的な目じるしを使う人がいる。一方,「方向感覚がいい」人は,しっかりした空間認識能力をもっているのでそれに頼る必要がない。だが,このような人が脳に損傷を受けて空間認識の感覚を失った場合は,視覚的な目印を使う方法に頼ればいい。神経可塑性が認知されるまで,補償のマスカレードは----補償あるいは「代替戦略」ともいわれていて,文字を読むことができない人に音声テープを代わりにあたえるように----学習障害のある子どもの発達を助けるのに用いられてきた。
4番目は「鏡映領域の引き継ぎ」というものだ。片方の半球のある機能が失われると,もう一方の半球の,同じような位置にある場所が,失われた機能をできるだけ引きつごうとして変化する。
ノーマン・ドイジ 竹迫仁子(訳) (2008). 脳は奇跡を起こす 講談社インターナショナル p.310
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