ニュートンの宇宙観には,完全な決定論というほかに,もう1つの面がある。それは因果関係というものを単純化したことである。アリストテレスは,ものごとの原因には4種類があるとした。それは質料因,動力因,目的因,形相因である。
質料因とは,あるものが本来もっている本質によって,その性質や現象が決められることをいう。つまり,いろいろなものが示す性質や振る舞いの違いは,それらが本来もっている質の違いによって生ずるということである。
動力因とは,あるものが他から加えられた力によって,現象が引き起こされることをいう。あるもの,あるいは,あることが原因となって次のことが起こるという場合である。
目的因とは,ある目的を達成するために,あることが引き起こされることをいう。
形相因とは,もののあるべき形のことをいう。例えば,プトレマイオスの天文学では,天体は地球の周りを円運動するものと考えられたが,それは円というものが完全な形であるからだとされた。
近代科学は,動力因以外のすべてを否定した。つまり,質料因,目的因,形相因をものごとの説明原理として認めないことにしたのである。
竹内 啓 (2010). 偶然とは何か:その積極的意味 岩波書店 pp.24
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